ヤマノケは、2007年2月5日の夜に、2ちゃんねるオカルト板に立てられた「死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?」に投稿された、怪談です。
今回は、ヤマノケにまつわる恐ろしい夢の内容と、その後日談についてお話しします。
ヤマノケの怖い話【2ちゃんねる洒落怖より】
2ちゃんねるオカルト板のスレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」、通称「洒落怖(しゃれこわ)」にある怪談が投稿されました。
それが、これからお話する「ヤマノケ」の怪談だったのです・・・。
起:山道のドライブ
一週間前の話です。
投稿者(父親)は、ある日、娘を連れてドライブに出かけました。
山道を進んでいくうちに、投稿者は娘を驚かせようと思い立ち、舗装されていない脇道に車を入れていきました。
娘は不安そうに制止しましたが、投稿者はそれを面白がって、どんどん奥へと進んでいきました。
しかし、山奥に入り込んだところで、突然エンジンが止まってしまいました。
携帯電話も圏外で、車の知識もない投稿者は途方に暮れてしまいます。
最寄りのドライブインまでは歩いて何時間もかかる距離だったため、仕方なく車中泊をすることにしました。
夜が更けていく中、周囲は静寂に包まれ、時折風が木々を揺らす音だけが聞こえてきました。
娘は助手席で眠りについていました。投稿者も寝ようと目を閉じた時、突然奇妙な音が聞こえてきたのです。
承:「テンソウメツ」とつぶやく妖怪
「テン(ケン)…ソウ…メツ…」
この不気味な音は、何度も繰り返され、次第に近づいてくるように感じられました。
恐怖に駆られた投稿者が目を開けると、白くのっぺりとした姿の何かが、異様な動きで車に近づいてくるのが見えました。
その姿は、ウルトラマンに登場するジャミラに似ていて、頭がなく、胴体の胸部分に顔がついているように見えました。一本足で、ケンケンしながら両手を激しく振り回し、体全体をぶれさせながら近づいてきます。
投稿者は恐怖で叫びそうになりましたが、娘を起こさないようにと必死に声を押し殺しました。
その白い影は車の脇を通り過ぎていくように見えましたが、安堵したのも束の間、投稿者が娘の方を向き直ると、その怪異が助手席の窓の外にいたのです。
近くで見ると、頭がないと思ってたのに、胸のあたりに顔がついています。しかも、恐ろしい顔で不気味にニタニタと笑っているのです。
投稿者は怖いを通り越して、娘に近づかれたって怒りが沸いて来ました。そして、「この野郎!!」と叫びました。
叫んだ途端、そいつが消えて、娘が跳ね起きました。
自分の怒鳴り声にびっくりして起きたのかと、娘に謝ろうとしました。
しかし、娘は「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」とぶつぶつつぶやき始めました。
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転:「はいれた」娘に取り憑いたヤマノケ
投稿者はやばいと思い、何とかこの場を離れようと、ダメ元でエンジンをかけてみました。すると、かかったのです。
急いで来た道を戻って行きます。娘は隣でまだつぶやいていました。
投稿者は、早く人がいるところへ行きたくて、車を飛ばします。
ようやく街の明かりが見えてきて、少し安心しました。
しかし、その頃には娘のつぶやきが、「はいれたはいれた」から「テン・・ソウ・・メツ・・」に、いつの間にか変わっていたのです。
顔も、娘の顔ではないようになっていました。
家に帰るにも娘がこんな状態ではと、投稿者は目についた寺に駆け込みました。
夜中でしたが、寺の隣の住職が住んでいるらしきところには明かりがついていました。
投稿者は、娘を引きずりながらチャイムを押しました。
すると、住職らしき人が出て来て、娘を見るなり「何をやった!」と言うのです。
山に入って変な奴を見たことを言うと、残念そうな顔をして、「気休めにしかならないだろうが」とお経をあげて、娘の肩と背中をバンバン叩き出しました。
結局その夜は、住職に泊めてもらうことになりました。
結:寺の住職から聞いたヤマノケの正体
住職によると、これはヤマノケという山の妖怪に取り憑かれたのだと。
ヤマノケは女性に取り憑く力を持ち、49日以内に取り除かないと一生正気にに戻れなくなる可能性があるといいます。
住職はそうならないように、娘を預かり、何とかヤマノケを追い出す努力をしてみると言ってくれました。
さらに、ヤマノケを完全に取り除くまでは他の女性に会わせてはいけないと警告されました。なぜなら、女性から女性へと憑依が移ることもあるからです。
あのまま家に帰っていたら、投稿者の妻にもヤマノケが憑いてしまったかもしれません。
完全にヤマノケを抜くまでは、妻も娘に会えないのです。
一週間たったが、娘はまだ住職のとこにいる。
毎日様子を見に行ってるが、もう娘じゃないみたいだ。
ニタニタ笑って、なんともいえない目つきで俺を見てくる。
早くもとの娘に戻って欲しい。
遊び半分で山には行くな。
という言葉で、物語は終わります。
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後日談:ヤマノケは落ちたのか?
後日、投稿者が電話で住職に聞いたところ、ヤマノケは、山の霊的な『悪意の総称』みたいなものだそうです。
姿を現した妖怪自体もヤマノケであり、怪異がとりついてる状態のことも「ヤマノケ」というんだとか。
ヤマノケは『魑魅(チミ)』ともいうらしいです。
投稿者は、住職にこのまま任せるべきか、それとも病院に連れて行った方が良いのか、妻と悩みます。
ただ、投稿者がなんだかよくわからないものを見たのは確かです。
それが関係しているとしたら、たぶん病院に行っても治らないだろうと考えます。
その後も何度か投稿者の書き込みがありましたが、次の書き込みを最後に、途切れています。
これで最後にする。
なんで道を外れたのか、今は後悔ばかりしている。
その当時の精神状態が、すでにヤマノケに操られてたのかもしれない。
なんて都合のいい考えか。
とにかく、遊び半分で山には入るな。彼女、奥さん、娘とかいるなら尚更。
本当にそれだけは言っておきたい。
父親は娘を救うため、必死に住職の指示に従いましたが、娘が元の状態に戻れたかどうかは不明のままです。
この恐ろしい体験は、愛する家族を失った父親の心に、深い傷跡を残したのでした。