コトリバコは、2005年6月6日昼過ぎ、2ちゃんねるオカルト板に立てられた「死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない? 99」に投稿された、怪談です。
今回は、コトリバコにまつわる恐ろしい出来事と、その中身や作り方について、お話しします。
コトリバコの怖い話【2ちゃんねる洒落怖より】
2ちゃんねるオカルト板のスレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」、通称「洒落怖(しゃれこわ)」にある怪談が投稿されました。
それが、これからお話する「コトリバコ」の怪談だったのです・・・。
女子大生Sの発見
夏休みのある蒸し暑い日、女子大生Sは実家の古い納屋の解体作業を手伝っていました。
実家は田舎町にあり、代々続く古い家でした。
納屋は長年使われておらず、埃と蜘蛛の巣が至る所に張り巡らされていました。
Sは汗を拭きながら、古い農具や家具を運び出す作業を続けていました。
午後の陽射しが納屋の隙間から差し込み、埃っぽい空気中に光の筋を作っています。
そんな中、Sは奥の隅に古びた箱を見つけました。
箱は一見するとパズルのようで、複雑な模様が刻まれており、開け方が分かりませんでした。
表面には不思議な文様が刻まれており、触れると何か不思議な感覚が走ります。
Sは興味を持ち、その箱を丁寧に拭いて観察しました。
「これ、なんだろう?」
Sは独り言を呟きながら、箱を手に取りました。
重さは予想以上に軽く、大きさは両手で抱えられるくらいでした。
表面の模様は、一見ランダムに見えますが、よく見ると何かの規則性があるようにも感じられます。
Sは、この箱について詳しく知りたいと思い、週末の友人たちの集まりに持っていくことにしました。
その日まで、Sは箱を自分の部屋に置いておきました。
不思議なことに、箱を部屋に置いてから、Sは毎晩奇妙な夢を見るようになりました。
夢の中では、誰かが泣いているような声が聞こえ、暗い部屋の中で何かがうごめいているような感覚に襲われました。
集まりの日、Sは箱を取り出すと、友人たちは一斉に興味津々な様子で箱を囲みました。
「すごい!これ、どこで見つけたの?」
「開け方が分からないの?」
と、次々に質問が飛びます。みんなで箱の開け方を探ろうとしますが、誰も正解にたどり着けません。
その不思議な雰囲気に、部屋の空気が少しずつ変わっていくのを、誰も気づきませんでした。
窓の外では、急に空が曇り始め、風が強くなってきました。
部屋の中の温度が少しずつ下がっていき、友人たちは不思議そうな顔を見合わせます。
そんな中、地元の神社の息子Mが部屋に入ってきました。
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神社の息子Mの気づき
Mは普段から神秘的な雰囲気を持つ青年で、幼い頃から神社で修行を積んでいました。
彼が部屋に入ってきた瞬間、空気が変わったのを感じました。
友人たちが囲んでいる箱に目をやると、Mの顔色が急変します。
「その箱…触らないで!」
Mの声が部屋に響き渡ります。
友人たちは驚いて手を引っ込めました。
Mは震える声で説明を始めます。
「それは…コトリバコだ。非常に危険な呪いの箱なんだ。」
Mの脳裏に、幼い頃、祖父から聞いたコトリバコの恐ろしい伝承が蘇ります。
祖父は厳しい表情で、「コトリバコは決して開けてはならない。それは、人々の怨念と悲しみが詰まった箱なのだ」と語っていました。
Mは急いで友人たちに箱に触れないよう警告しますが、時既に遅し。
友人たちは最初、Mの様子を不思議に思いましたが、彼の真剣な表情を見て、次第に不安が広がっていきました。
「Mくん、具体的にどんな危険があるの?」
Sが恐る恐る尋ねます。Mは深呼吸をして、知っている限りの情報を話し始めます。
「コトリバコは、昔、ある村で作られた呪いの箱なんだ。その中には…」
Mの言葉が途切れます。彼は言葉を選びながら続けます。
「子供たちの…魂が封じ込められているんだ」
部屋の空気が凍りつきます。友人たちの顔から血の気が引いていきました。
窓の外では、雨が降り始めました。雨音が部屋の重苦しい雰囲気をさらに強めます。
Mは続けます。
「箱を開けると、封じ込められた魂が解放されて、開けた人や周りの人々に取り憑くんだ。そして…」
Mの声が震えます。
「最悪の場合、命を落とすこともある」
友人たちは言葉を失い、互いの顔を見合わせます。
部屋の隅に置かれたコトリバコが、今にも動き出しそうに見えます。
Mは決意の表情で言います。
「僕たちは、この箱を安全に封印しなければならない」
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Mの急変と父親への連絡
Mが説明を終えた直後、突然彼の体が震え始めました。
顔色が青ざめ、冷や汗が額を伝います。
「う…うっ…」とMは苦しそうに呻き、次の瞬間、激しい嘔吐を始めました。
友人達が驚いて駆け寄ります。
「Mくん!大丈夫?」
「救急車を呼んだ方がいい?」
混乱の中、Mは必死に携帯電話を取り出し、父親に電話をかけます。
「父さん…」
Mの声は震え、時折嘔吐で途切れます。
「コトリバコが…ここに…見つかったんだ…」
電話の向こうで、父親の声が急に緊張に満ちたものに変わります。
「何だって?コトリバコだと?」
父親の声には、驚きと恐怖が混ざっています。
「息子よ、絶対にその箱に触れるな。今すぐそこを出るんだ!」
Mは泣きながら状況を説明します。
「でも…もう遅いんだ…みんなが触ってしまった…僕も…」
Mの言葉に、父親は一瞬言葉を失います。しかし、すぐに冷静さを取り戻し、
「わかった。すぐに行く。それまで、お前にできる限りのことをしろ。祝詞を唱えて、塩をまくんだ」
父親は事態の深刻さを理解し、すぐに駆けつけることを約束します。
電話を切ったMは、友人達に向かって弱々しく言います。
「みんな…ごめん…僕が早く気づいていれば…」
Mの友人たちは、状況が飲み会の単なる悪ふざけを超えて、何か本当に恐ろしいことが起きているのではないかと感じ始めます。部屋の空気は重く、誰もが不安と恐怖に包まれていきました。
窓の外では雨が激しさを増し、時折雷鳴が響きます。
部屋の電気が不気味にちらつき始め、友人たちは互いに寄り添います。
Sは震える手でコトリバコを見つめ、「私が持ってきてしまって…本当にごめんなさい…」と涙ぐみました。
その時、部屋の隅に置かれたコトリバコから、かすかな音が聞こえたような気がしました。
友人たちは息を呑み、恐る恐る箱を見ます。
箱は確かに、わずかに震えているように見えました。
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Mによる不慣れなお祓い
父親が到着するまでの間、Mは自分にできることをしなければならないと決意します。
彼は震える体を起こし、友人たちに向かって言います。
「みんな、落ち着いて。僕にできることがある」
Mは不慣れながらも、神社で学んだお祓いの作法を思い出し、実行し始めました。
まず、部屋の四隅に塩をまきます。
「塩は邪気を払う力がある」とMは説明します。
次に、持参していた御札を取り出し、コトリバコの周りに配置します。
震える手で塩をまき、祝詞を唱えながら、コトリバコの封印を試みます。
「はらえたまえ、きよめたまえ…」
Mの声は最初は小さく震えていましたが、徐々に力強さを増していきます。
友人達は恐怖と驚きの中、Mの必死の様子を見守ります。Mの額には汗が滲み、声は時折震えていましたが、彼の目には強い決意の光が宿っていました。
お祓いが進むにつれ、部屋の空気が少しずつ変わっていくのを感じます。
コトリバコから発せられていた不気味な雰囲気が、徐々に薄れていくようでした。
窓の外の雨も、少しずつ小降りになっていきます。
しかし、完全に封印するには父親の助けが必要だと、Mは感じていました。
「あと少しだ…」
Mは歯を食いしばって祝詞を続けます。
友人たちは、目の前で繰り広げられる非日常的な光景に、言葉を失っていました。
Sは涙を流しながら、「Mくん…ありがとう…」と小さな声で言います。
その時、部屋のドアが勢いよく開き、Mの父親が飛び込んできました。
「みんな、大丈夫か?」
父親の声に、友人たちはほっとした表情を浮かべます。
父親はすぐにMの横に駆け寄り、息子の肩に手を置きます。
「よくやった、息子よ。あとは任せなさい」
父親は専門的な道具を取り出し、Mと共にお祓いを続けます。
部屋の空気が清められていく中、コトリバコの不気味な雰囲気は完全に消え去りました。
友人達は、恐怖と安堵が入り混じった表情で、この一連の出来事を見守っていました。
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コトリバコの中身と作り方
お祓いが終わり、部屋の空気が落ち着いた後、Mの父親は深刻な表情で友人たちに向き合いました。
「皆さん、今日の出来事について詳しく説明する必要があります。コトリバコの中身と、それに関わる歴史について話しましょう」
父親は、コトリバコの正体や、それに関わる山陰地方の集落の壮絶な過去について語り始めました。
「コトリバコは、江戸時代末期から明治時代初期にかけて、極度の貧困に苦しむ特定の集落で作られた呪いの箱なのです」
その製作方法は残虐極まりなく、乳幼児を生贄にして作られたとされています。
父親は慎重に言葉を選びながら続けます。
「箱の中には、犠牲となった子供たちの魂が封じ込められているのです。その魂は、箱を開けた者や触れた者に取り憑き、不幸をもたらすと言われています。特に女性と子供に対して強い影響があり、内臓が千切れるなど、苦しみながら死に至るという恐ろしい効果があるのです」
さらに、この集落は長年にわたって差別を受けており、その怨念がコトリバコに込められていたというのです。
「彼らは、自分たちへの差別や迫害への復讐として、このような恐ろしい呪いの品を作り出したのです」
父親は、明治時代初期の隠岐騒動や、被差別部落の歴史など、日本の暗い過去とコトリバコの伝承が絡み合っていることを説明しました。
「これは単なる怪談ではありません。私たちの社会が抱えてきた問題の象徴なのです」
友人達は、父親の説明に言葉を失いました。
Sは震える声で尋ねます。
「では、このコトリバコはどうすればいいのでしょうか?」
父親は厳しい表情で答えます。
「この箱は、特別な方法で封印し、安全な場所で保管しなければなりません。我々神社の者たちが代々受け継いで管理してきたのですが、時代の変化とともに、その存在が忘れられかけていたのです」
さらに父親は、コトリバコの危険性について警告します。
「一度開けられたコトリバコの呪いを完全に解くことは極めて困難です。今回のように応急処置的な封印はできますが、根本的な解決には至りません。そのため、この箱の存在を知った皆さんには、決して他言しないよう約束してもらわなければなりません」
部屋の中は重い沈黙に包まれました。
友人達は、自分たちが経験した恐怖の背後にある深い社会問題に、思いを巡らせます。
Mは弱々しい声で言います。
「僕たちは、この経験から何を学ぶべきなんだろう?」
父親は深く息を吐き、答えました。
「過去の過ちから学び、二度とこのような悲劇を繰り返さないよう努めることです。差別や貧困、社会の歪みが生み出す悲劇は、今もなお形を変えて存在しています。私たちは、コトリバコの物語を通じて、社会の闇に目を向け、より良い未来を作る努力をしなければならないのです」
友人達は互いの顔を見合わせ、この経験が自分たちの人生に深い影響を与えることを悟ります。
コトリバコの存在は、彼らに日本の歴史の暗部と、現代社会が抱える問題について深く考えさせる契機となったのです。
父親は最後にこう付け加えました。
「しかし、恐れるだけでは何も変わりません。この経験を糧に、より思いやりのある社会を作るために、それぞれができることから始めていってください。それこそが、コトリバコに封じ込められた魂たちへの最大の供養となるのです」
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