ゲド戦記のクモが怖い理由4つ
『ゲド戦記』の物語の中心は、エンラッドの王子・アレン。
彼は、思いがけず国王を殺してしまうという重大な過ちを犯してしまいます。
そんな彼の運命が大きく動き出すきっかけとなったのが、大賢人ハイタカとの出会いでした。
二人は、世界の均衡が乱れている原因を突き止めるため、冒険の旅に出ることになります。
物語には魔法使いたちが登場しますが、その中でも特に印象的なのが「クモ」という魔法使いです。
クモは一見すると美しい女性に見えますが、その本性は恐ろしいものでした。
クモの目的
クモの目的は、「永遠の命」を手に入れること。
そのためにアレンを利用し、邪魔者のハイタカを排除しようと企んでいたのです。
クモの罠にかかり、城に囚われてしまったハイタカたち。彼らを救うために立ち上がったのが、顔に傷のある少女・テルーでした。
テルーの説得で正気を取り戻したアレンは、彼女と共にクモと対決します。
その戦いの中で、クモの本当の姿が明らかになっていきます。
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クモの正体は男性だった
実は、美しい女性に見えたクモの正体は、年老いた男性だったのです。
クモの姿は、ヘドロのようにドロドロと溶けながら移動したり、目が大きく窪んで闇のように変化したりと、まさにホラー映画さながらの恐ろしさでした。
このクモの不気味さを一層際立たせたのが、声優・田中裕子さんの素晴らしい演技でした。
特に印象的なのが、自ら絞め殺したテルーを見て「死んだ、死んだ、かわいそう…」と呟くシーンです。
壊れた機械のように同じ言葉を繰り返すクモのセリフと、田中裕子さんの優しい声色のコントラストが、不気味さを増幅させ、トラウマレベルの怖さを生み出しています。
クモの体がヘドロになる
映画の中で、クモは、黒い気持ち悪いヘドロのような姿に変身して戦っています。
これは、闇だけを見ている者にしか使えない特殊な魔法かもしれません。
実は、この不気味な黒いヘドロは他のシーンにも登場しているんです。
アレンの夢の中でも現れていたのを覚えていますか?
夢の中では、このヘドロはアレンを助けようと手を差し伸べます。
しかし、アレンはヘドロに飲み込まれてしまい、そこで目が覚めるんです。
面白いことに、このヘドロは姿を変えていきます。
ハイタカから始まり、アレンの父、そして影のアレンへと変化していくんです。
この展開には深い意味がありそうですね。
影のアレンが手を差し伸べているということは、アレンにはまだ希望があるということかもしれません。
闇から救い出してくれる光の存在がいるという暗示かもしれませんね。
一方、クモの場合はどうでしょうか。
同じようにヘドロの体を持っていても、クモには影の存在も現れません。
誰も救いの手を差し伸べてくれる人はいないんです。
むしろ、かつて自分を救おうとしてくれたハイタカに復讐しようとしているんですから。
クモは完全に闇に落ちてしまったのかもしれません。
光を見ることをやめ、闇だけを見る存在になってしまった結果、体までヘドロのようになってしまったのではないでしょうか。
クモは生と死という重要な問題から目を背け、不老不死を追い求めました。
しかし、それは結果的に生きることを拒否することになり、破滅への道を歩むことになったんです。
対照的に、アレンは生と死の問題に真正面から向き合います。
自分の影と一つになり、それを乗り越えることで、最後には自分の国に戻ることを選びました。
この作品は、アレンとクモを対比させることで、私たちに大切なメッセージを伝えようとしているのかもしれません。
クモが死ぬ最後のシーン
クモの怖いシーンで、特に話題になるのは、最後のシーンです。
「ホラー並みに気持ち悪い」という感想が出たほど・・・。
そのくらい、クモの姿は、想像を絶するほど恐ろしいものでした。
目は大きな空洞のようになり、顔中にしわが刻まれ、まるで悪霊のような醜い姿に変貌していたのです。
物語はさらに驚くべき展開を見せます。
クモは一度テルーを魔法で殺してしまいます。
しかし、テルーの中に眠っていた竜の力が目覚め、彼女は奇跡的に蘇生するのです。
竜となったテルーの力は凄まじく、クモを焼き尽くしてしまいます。
ドロドロに溶けたクモの最期は、まさに無残としか言いようがありませんでした。
そして、テルーはクモに向かって「影は闇に帰れ」と告げるのです。
この言葉には深い意味が込められています。
実は、クモはとっくに寿命を迎えているはずでした。
魔法の力で無理に生を引き延ばしていただけだったのです。
つまり、クモは本来あるべき「死」を受け入れただけだったのかもしれません。
このシーンは短いながらも、非常に印象的でした。
ゲド戦記のクモの怖さを理解する3つのポイント
ゲド戦記におけるクモの怖さは、読者の心に深く刻まれる印象的な要素です。
この物語に登場するクモが持つ恐ろしさの本質を、以下の3つのポイントから解き明かしていきます。
- クモの描写が生々しく迫力があるから
- 物語の中でクモが象徴的な存在として描かれているから
- 登場人物の恐怖心が読者に伝染するから
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
クモの描写が生々しく迫力があるから
ゲド戦記におけるクモの描写は、非常に生々しく迫力のある表現で読者を圧倒します。
作者のアーシュラ・K・ル=グウィンは、クモの姿や動きを細密に描写することで、読者の想像力を刺激しています。
実際に、ゲド戦記のクモの描写には以下のような特徴があります。
- 巨大な体躯や鋭い牙など、クモの外見が克明に描かれている
- クモの描写が、異質な恐怖感を醸し出している
これらの描写によって、読者はクモの存在を生々しく感じ取ることができるのです。
また、クモの姿を想像することで、読者自身の恐怖心も掻き立てられます。
だからこそ、ゲド戦記のクモは読者の心に強く残る存在となっているのでしょう。
物語の中でクモが象徴的な存在として描かれているから
ゲド戦記において、クモは単なる生き物以上の意味を持つ象徴的な存在として描かれています。
物語の中で、クモは闇や恐怖、未知の脅威などを表す重要なシンボルとして機能しているのです。
クモが象徴する意味合いには、以下のようなものがあります。
- 主人公ゲドが直面する内なる闇や恐怖の具現化
- 魔法世界の神秘的かつ危険な側面を表す存在
- 人間の理解を超えた、異界の力や存在の象徴
このように、クモは物語のテーマや登場人物の内面を表現する手段として使われています。
そのため、クモの存在が単なる怖さを超えて、読者の心に深く響くのです。
クモを通じて、読者は物語の深層にある意味を感じ取ることができるのかもしれません。
登場人物の恐怖心が読者に伝染するから
ゲド戦記では、登場人物たちがクモに対して抱く恐怖心が、非常に鮮明に描かれています。
主人公ゲドをはじめとするキャラクターたちの恐怖や不安が、読者の心にも強く伝わってくるのです。
登場人物の恐怖心が読者に伝染する要因として、以下のようなものが挙げられます。
- キャラクターの心理描写が細やかで、感情移入しやすい
- クモとの遭遇シーンが、緊迫感あふれる展開で描かれている
- 登場人物の恐怖反応が、リアルな身体的描写を伴っている
これらの要素によって、読者は登場人物と同じ恐怖を追体験することになります。
また、キャラクターの恐怖心を通じて、クモの存在がより脅威的に感じられるのです。
あなたも、ゲド戦記を読みながら、登場人物と一緒にクモの恐怖を感じてみてはいかがでしょうか。
原作『ゲド戦記』におけるクモの登場シーン4選
ゲド戦記には、印象的なクモの登場シーンがいくつか存在します。
これらのシーンは、物語の展開や主人公の成長に重要な役割を果たしています。
代表的なクモの登場シーンとして、以下の4つを紹介します。
- 影との戦い
- テナーの迷宮
- オスキルの森
- ゲドの内なる闇
それぞれのシーンについて、詳しく見ていきましょう。
影との戦い
「影との戦い」は、ゲド戦記におけるクモの登場シーンの中でも、特に印象的な場面です。
主人公ゲドが自身の放った影と対峙する際、その影がクモの姿を取って現れるのです。
このシーンには、以下のような特徴があります。
- クモの姿をした影が、ゲドの恐怖や弱さを象徴している
- ゲドとクモの戦いが、内なる闇との葛藤を表現している
- クモの描写が、読者の想像力を刺激する鮮明さを持っている
「影との戦い」は、ゲドの成長と自己との和解を象徴的に描いた重要なシーンです。
また、このシーンを通じて、クモがゲドの内面を映す鏡のような役割を果たしています。
読者は、このシーンからゲドの内面の葛藤や成長を感じ取ることができるでしょう。
テナーの迷宮
テナーの迷宮でのクモとの遭遇は、ゲド戦記の中でも特に恐怖感の強いシーンの一つです。
暗く入り組んだ迷宮の中で、ゲドが巨大なクモと対峙する様子が描かれています。
テナーの迷宮のシーンには、以下のような特徴があります。
- 閉鎖的な空間が、クモの存在をより脅威的に感じさせる
- ゲドの魔法とクモの対決が、緊迫感あふれる展開で描かれている
このシーンは、ゲドの勇気と知恵が試される重要な場面となっています。
また、テナーの迷宮は、ゲドの内面の迷いや恐怖を象徴する舞台としても機能しています。
読者は、このシーンを通じてゲドの成長と、クモが象徴する恐怖との戦いを見守ることになるのです。
オスキルの森
オスキルの森でのクモとの遭遇は、ゲド戦記の物語に神秘的な雰囲気を加える重要なシーンです。
古代の魔法が息づく森の中で、ゲドが不思議なクモと対面する様子が描かれています。
オスキルの森のシーンには、以下のような特徴があります。
- 幻想的な森の描写が、クモの存在をより神秘的に感じさせる
- クモたちの不思議な行動や姿が、読者の好奇心を刺激する
- ゲドとクモたちのコミュニケーションが、魔法世界の深さを表現している
このシーンは、ゲドが魔法世界の奥深さを理解していく過程を描いています。
また、オスキルの森のクモたちは、自然界の神秘や魔法の本質を象徴する存在として描かれています。
読者は、このシーンを通じて魔法世界の不思議さと、クモたちの多面的な存在意義を感じ取れるでしょう。
ゲドの内なる闇
ゲドの内なる闇との対峙は、クモのイメージが象徴的に用いられる重要なシーンです。
ゲドが自身の内面に潜む恐怖や弱さと向き合う過程で、クモのイメージが現れるのです。
このシーンには、以下のような特徴があります。
- クモが、ゲドの内なる闇や恐怖を視覚化する役割を果たしている
- ゲドの心理描写が、クモのイメージと重ね合わせて表現されている
- クモとの対峙が、ゲドの自己受容と成長を象徴している
ゲドの内なる闇との戦いは、物語の核心を成す重要なテーマとなっています。
また、このシーンを通じて、クモが単なる怪物ではなく、自己の一部であることが示唆されています。
あなたも、ゲドの内なる闇との戦いを通じて、自身の恐怖や弱さと向き合う勇気をもらえるかもしれません。