リンフォンは、2006年5月13日に、2ちゃんねるオカルト板に立てられた「死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?」に投稿された、怪談です。
今回は、「リンフォン」というパズルのおもちゃにまつわる恐ろしい内容と、その後日談についてお話しします。
リンフォンの怖い話【2ちゃんねる洒落怖より】
2ちゃんねるオカルト板のスレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」、通称「洒落怖(しゃれこわ)」にある怪談が投稿されました。
それが、これからお話する「リンフォン」の怪談だったのです・・・。
正20面体のパズル「リンフォン」
日曜日
ある日曜日。アンティーク店巡りが趣味の投稿者は、彼女とドライブデート中に、古びた骨董品店を訪れます。
この店は、幹線道路から外れた山道にひっそりと佇んでおり、まるで時間が止まったかのような雰囲気を醸し出していました。
店内は薄暗く、埃っぽい空気が漂い、様々な時代の品々が雑然と並べられています。
彼女が店内を物色している中で、ふと目に留まったのが、バスケットケースの一番底に押し込まれるようにあった、正20面体の置物でした。
彼女はこのオブジェに強く惹かれ、購入を決意します。
しかし、彼女が正20面体をレジに持って行くと、店主は一瞬驚愕した表情を見せます。
そして、奥の部屋に引っ込み、妻と思しき老女と小声で何やら揉めていましたが、黄ばんだ説明書を手にして戻って来ました。
「それはね、いわゆる玩具の1つでね。リンフォンって名前で。この説明書に詳しい事が書いてあるんだけど」
紙には正20面体の絵に『RINFONE(リンフォン)』と書かれており、 それが『熊』→『鷹』→『魚』の順に変形する経緯が、イラストで描かれていました。
店主によると、ラテン語と英語の説明が添えられています。
「この様に、この置物が色んな動物に変形出来るんだよ。まず、リンフォンを両手で包み込み、おにぎりを握るように撫で回してごらん」
彼女は言われるがままに、リンフォンを両手で包み、握るように撫で回しました。
すると、「カチッ」と言う音がして、正20面体の面の1部が隆起したのです。
「その出っ張った物を回して見たり、もっと上に引き上げたりしてごらん」
店主に言われる通りにすると、今度は別の1面が陥没します。
リンフォンは、正20面体のどこかを押したり回したりすると、熊や鷹、魚などの色々な動物に変形するようです。
リンフォンの価格は当初1万円でしたが、彼女が値切り、最終的に6,500円で購入することになりました。
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熊の完成
月曜日
彼女が興奮しながら、『熊』の半身ができたと写メールを送ってきました。
写真には、リンフォンを握っている彼女の両手と、リンフォンから突き出ている、熊の頭部のような物と足が2本映っています。
火曜日
徹夜でリンフォンをいじっていたら、熊が完成したと彼女からメールが来ました。
投稿者が彼女の家を訪ねると、4つ足で少し首を上げた、熊の形になったリンフォンがありました。
表面に熊の毛皮のような質感が現れ、触るとふわふわとした感触があります。完成時の姿は、まるで小さな熊が丸くなって眠っているかのようです。目や耳、鼻の位置まで精巧に作られており、主人公も驚くほどの出来栄えでした。この段階では、部屋に温かみのある雰囲気が漂い始めます。
鷹の完成
水曜日
彼女が鷹を完成させます。
彼女から送られてきた写メールには、翼を広げた鷹の形をしたリンフォンが映っていました。
精巧な造りに投稿者は驚きます。今にも羽ばたきそうな鷹です。
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魚の完成間近で生じた異変
木曜日
彼女から着信があり、「さっき電話した?」と聞かれますが、電話はしていません。
聞けば、5分ほど前から、30秒感覚くらいで着信が来ると言います。
通話押しても、何か街の雑踏のザワザワみたいな、大勢の話し声のようなものが聞こえて、すぐ切れるというのです。
着信には、普通は番号が表示されるか、『非通知』、あるいは『公衆』と出るはずですが、『彼方(かなた)』と表示されると、彼女は気味悪がります。
投稿者は混線か何かだろうと返し、彼女も携帯の電源を切って、今日は寝るといいます。
ちなみに、リンフォンは、『魚』がもうすぐ完成しそうです。
金曜日
奇妙な電話のことも気になった投稿者は、彼女の元に向かいます。
リンフォンはほぼ魚の形をしており、あとは背びれや尾びれを付け足すと完成、という状態でした。
彼女の話では、会社の昼休憩時に電話が入ったそうです。
今度は普通に『非通知』だったので出たところ、
「それで通話押してみると、『出して』って大勢の男女の声が聞こえて、それで切れた」
『魚』を完成させるために色々いじくってみましたが、なかなか尾びれと背びれの出し方がわかりません。
投稿者は彼女の家に泊まることにしましたが、その夜、嫌な夢を見ます。
暗い谷底から、大勢の裸の男女が這い登ってくるのです。
投稿者は必死に崖を登って逃げます。
後少し、後少しで頂上だ。助かる。
頂上に手をかけたその時、女に足を捕まれた。
「連 れ て っ て よ ぉ ! !」
汗だくで目が覚めた時は、まだ午前5時過ぎでしたが、再び眠れそうにはありませんでした。
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土曜日
携帯ショップに行きましたが、原因はわからずじまいでした。
気晴らしにと占い師に占ってもらおうとアポを取ると、明日の日曜に予定が取れた。
気分転換に「占いでもしてもらおうか」と、市内でも当たると有名な、「猫おばさん」と呼ばれる占い師に占ってもらうことにしました。
電話をすると、運よく翌日の予約が取れました。
占い師によるとリンフォンは地獄の門?
日曜日
「猫おばさん」を訪ねるも、玄関先で「帰ってください」と追い返されてしまいます。
占い師の飼っている猫たちも、一斉に威嚇し、警戒しているようです。
「私が猫をたくさん飼ってるのはね、そういうモノに敏感に反応してるからです。猫たちがね、占って良い人と悪い人を選り分けてくれてるんですよ。こんな反応をしたのは始めてです」
投稿者は、あることに気付き、彼女への妙な電話、自分の見た悪夢を、おばさんに話しました。
すると、
「彼女さんの後ろに、動物のオブジェの様な物が見えます。今すぐ捨てなさい」
と、渋々答えます。
「それがどうかしたのか」とたずねると、「お願いですから帰ってください、それ以上は言いたくもないし見たくもありません」とそっぽを向きました。
彼女も顔が蒼白になってきています。投稿者が執拗に食い下がると、おばさんが立ち上がり、
「あれは凝縮された極小サイズの地獄です!!地獄の門です、捨てなさい!!帰りなさい!!」
と叫び、お金も要らないと言われます。
その後、彼女の家に帰った投稿者たちは、すぐさまリンフォンと黄ばんだ説明書を新聞紙に包み、ガムテープでぐるぐる巻きにして、ゴミ置き場に投げ捨てました。
やがてゴミは回収され、それ以来、これといった怪異は起きていません。
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後日談:アナグラムの意味
数週間後、彼女の家に行った時、アナグラム好きでもある彼女が、紙とペンを持ち、こう言い始めました。
「あのリンフォンって、『RINFONE』の綴りだよね。偶然と言うか、こじ付けかもしれないけど、これを並べ替えると『INFERNO(地獄)』とも読めるんだけど…」
「…ハハハ、まさか偶然偶然」
「魚、完成してたら、一体どうなってたんだろうね」
「ハハハ…」
『魚』が完成していたら、一体どうなっていたのか。
投稿者は、乾いた笑いしか出来ませんでした。
あれがゴミ処理場で処分されていること、そして2つ目がないことを、俺は無意識に祈っていた。
という言葉で、物語は終わります。
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物語の結末
投稿者と彼女は、占い師の助言を受けてリンフォンを廃棄し、そこで物語は終わっています。
ただ、リンフォンが本当に「地獄の門」だったのか、彼らは無事だったのか、多くの疑問が残されたままです。
この曖昧な結末が、読者の想像力を掻き立て、さらなる考察や議論を生み出しました。リンフォンの起源や、完成させた場合の結果など、様々な憶測が飛び交い、インターネット上で長く語り継がれる怖い話となりました。